ポーカーの分散 とは、数学的な期待値と実際の結果との差のことを言います。
この差は私達がコントロールすることはできない要素であり、それは運の要素とも言えます。つまりあなたがトーナメントで月平均で$4,000勝てるとしても、$10,000負ける月もあれば$20,000勝つ月もあるということです。
ポーカーというゲームにおいて、短期的なウィンレートがその人の正確な実力を表しているわけではありません。より多くのゲームやハンドをこなして初めて正確な数字に近づいていくのです。

ウィンレートという指標は、そのプレイヤーが長期間に渡ってどれ程の利益を出せるのかという期待値を示すものです。
キャッシュゲームの場合は、大抵100ハンド毎に何ビッグブラインドの利益があるかという指標(bb/100)を使います。リミットゲームの場合はよく100ハンド毎に何ビッグベットの利益があるかという指標(BB/100)を使います。PT4というトラッキングソフトではビッグベットの方を使っているようですが、今日では一般的にビッグブラインドの方を使うことが多いようです。トーナメントにおいては、ROI(投資収益率)という指標が使われます。
ここではMTTプレイヤーの月毎の収支を見てみましょう。

MTT_summaries

MTTにおける分散の大きさは、月毎の収支を見れば明らかでしょう

これはオンラインで長期に渡って利益を上げているポーカープロの成績です。
月に何百ものトーナメントをプレイしたとしても、月毎の収支はこれ程までに上下するのです。これはフィールドが大きく、ペイアウトがトップに偏ったトーナメントをプレイするプレイヤーにとってはごく当たり前のことなのです。故にしばしば大きな賞金を期待することができますが、ファイナルテーブルのような本当に上位のプライズに届くまでは、このような良いプレイヤーでさえも右肩下がりのグラフになってしまいます。
つまりMTTではその大きな賞金をあなたが獲得できるかどうかが重要になってきます。
SNGトーナメントの場合はフィールドが小さく、よりコンスタントに入賞することができる為分散はMTTと比べ小さくなります。
さらにMTTのプライズストラクチャーのように、トップがバイインの100倍の賞金を受け取るというような偏ったペイアウトにはなっていないことも分散がより小さくなる要因になっています。

キャッシュゲームはMTTと比べると分散の小さいゲームと言えますが、例え強いプレイヤーであっても30~40バイインのダウンスウィングは経験するでしょう。
次のキャッシュゲームチャートでは、10バイインのダウンスウィングを見ることができます。

PT4_chart

このPT4のキャッシュゲームチャート(BB表記)では、比較的穏やかな分散が見受けられます

ポーカーをプレイする限りは、分散から逃れる術はありません。
正確な期待値を計測する為の膨大なハンド数をこなすことがまず大切です。そしてその結果を、実際の結果よりも期待値に焦点を当てた分析を継続していくことがベストな方法と言えます。トーナメントであればチップEV、キャッシュゲームであれば$EVを参考にするとよいでしょう。

c_allin_adj_chart

このプレイヤーは実収支(左)は-$728.57ですが、期待値(右)で見ると+$20.19になります

ポーカーには運の要素がありますので、勝ったプレイヤーが必ずしもよいプレイヤーであるとは限りませんし、逆もまた然りです。運の要素を可能な限り削ぎ落としたものがEV(期待値)です。データの分析にEVを使うことでより正確な実力を知ることができます。
つまりもしあなたが$100のポットで80%のエクイティがあったとすると、あなたは$80の期待値を得ることになります。もしあなたが$50をポットに投資していたとすると、この場合では$30の利益を得る計算になります。
もしこのポットを勝つか負けるかした場合、その時の運、不運に左右されてしまいますが、長期的に見るとあなたはポットの80%を獲得したことになるのです。実際にはポットを負けてしまい$50を失ったとしても、EV上は$30のプラスという表示になり、より正確な実力を知ることができます。

ポーカーの分散 による他の影響

次のことはあなたに予測される ポーカーの分散 による影響です。

あなたのプレイスタイル – もしあなたのプレイスタイルがとてもルースアグレッシブだとすると、平均的なタイトプレイヤーと比べてより多くのポットに参加し、必然的により多くのお金をリスクにさらすことになるでしょう。よりルースにプレイすることはよりリスクを取ることになり、分散も大きくなることを意味します。

ポーカーゲーム – リミットゲームの場合はプレイヤーがベットできる額が固定されているので、ポットはより小さくなります。ノーリミットゲームの場合はその気になれば全てのスタックを一度に賭けることができる為、分散が大きくなります。さらにオマハのようなゲームになると、プレイヤーはより頻繁にオールインすることになるので分散はさらに大きくなります。オマハで2wayオールインになった場合、互いのエクイティは似たようなものになることが多いです。
例えばNLHだと70%対30%のようにどちらかに偏ったエクイティも多いですが、オマハだと50%対50%に近いエクイティになることがほとんどです。その影響によりオマハはオールインになる頻度も高く、分散も大きくなり上下の激しいグラフになってしまいます。NLHの場合はそれほどショウダウンになることは多くなく、ポットも小さく保たれるので分散がそこまで大きくならないのです。

ほんとに運がない?

もっと分散を知りたいなら私達は統計を使うことで起こり得る可能性を計算することができます。
人間の脳は信じられない程の適応能力があるということを覚えておくことが重要です。自分に都合のいいようにばかり考えていませんか?自分が負けた時の印象だけ強く残っていて、実は逆に運が良かったなんてこともあるのです。そういう人は大抵自分のリークを埋めようとしません。自分は強いけど運がないだけだと考え、そこで思考が止まってしまっています。強いプレイヤーというのは運が悪いだけの時でも自分のプレイを見直し、そんな時でもさらに自分のスキルに磨きをかけるものです。
分散からは誰も逃れられません。できることはバンクロールマネジメントとプレイのスキルに磨きをかけることだけです。

ポーカーの分散 についてもっと学びたいなら、次のリンクを参照してください。
Variance Sutudy
Useful Variance Calculator